はずれの一歩

近畿大学通信教育部図書館司書コースを2021年4月から受講し始めました

図書館情報資源特論 合格レポート(2021年4月入学)

0

※ 丸写しや、類似したレポートや試験回答は不合格になる可能性があります。 あくまで参考に、自分の言葉でレポートや試験回答を書いて下さい。

f:id:hazure_blog:20210822190854p:image

の順で書いていきます。

【設題】

灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。

 

【回答例】

1. 灰色文献の定義・意義・特性

灰色文献とは、発行が少数部で配布先が限定されていたり、所在確認や入手が非常に困難だったりする文献のことを指す。市販されている誰でも入手できる資料を「白」、政治や軍事上の機密情報が記載されていてごく少数の者以外には非公開にする機密文書を「黒」とするとき、中間に位置するため「灰色」と呼ばれている。また、存在そのものが未確認の文献を指す時にも使われる( 若林武敏『図書館情報資源特論』,2012年 p5)。

具体的な資料については後述するが灰色文献に該当する資料には、「政府刊行物」「地方自治体が作成した資料」「学位論文」「会議録」などが含まれる。これらの資料は一般的な流通過程にはのらないものの、資料として価値の高いものが多い。そのため、図書館に収集・管理する意義があるとされている。

また、灰色文献の種類を調査する際には国立国会図書館が発行している『日本全国書誌』が使用されている。『日本全国書誌』とは、国や地方公共団体の資料がリスト化したものである。国立国会図書館のウェブサイトでも灰色文献に関する情報を閲覧することができる(井上真琴『図書館に訊け!』ちくま新書,2004年)。

また、近年デジタル化の普及により、灰色文献の定義が変わりつつある。大学の研究資料や政府刊行物など、以前は入手困難だったものでもデータ化され、インターネットで簡単に閲覧できるようになってきている。それは、もはや灰色文献とは言えない。しかし、ネットの情報は更新や削除が頻繁に行われ、突然非公開になる可能性や、サイトが閉鎖される恐れなどもあり、常に入手可能とは限らない。公開までに時間が掛かる場合もある。そのため、図書館としてはこのような情報をいかに早くキャッチし、保存につなげていくのかということが大きな課題となっている。その手立ての一つとして、メタデータに関する電子アーカイブの研究が世界で進められている(総務省デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン」第4章 デジタルアーカイブの構築・連携の課題p31)。

 

2.灰色文献の具体例

政府刊行物

三権による国家機関が立法・行政あるいは広報のために作成・発行された資料のことである。例えば、政府発行の官報などがある。近年インターネットで公表される物も多くなった。例えば「官報」は、30日以内ならインターネット版で閲覧することができる。

・行政資料

政府機関や地域自治体及びその類縁機関、国際機関が発行した資料。

・民間の機関が作成した資料

民間の調査機関や専門研究機関などが作成・発行している資料のうち、プロジェクトレポートや研究成果報告書類などが該当する。

・学位論文

学位を取得するために書かれた論文で灰色文献に含まれる。一部は審査大学に、もう一部は国立国会図書館に贈られることになっている。本来流通を目的としたものではないため資料として価値が高い反面、入手が困難でもある。

・会議録

学会などで発表された論文、ディスカッション等の内容をまとめたもので学術的な価値が高い資料である。しかし、参加者のみに提供されるため学位論文と同様に入手が困難である。

・追悼録

故人の追悼文集や遺稿集などの饅頭本と呼ばれる資料も灰色文献に含まれる。学術研究の資料に用いられることもあるため、大学図書館などの重要な収集対象資料となっている。

・研究成果報告書

学者や研究者が文部科学省日本学術振興会から補助金を受けて行った研究結果をまとめたものである。一部はその機関や大学で保存されもう一部は国立国会図書館で保存される。

・展覧会カタログ

 展示会に出された作品についてまとめたものである展示会カタログは作品について深く知るために有用な資料である。資料性も高いため図書館においても収集・管理の対象となるものは少なくない。

・企業の社史

企業が作成している社史のうち特に日本や業界を代表するような企業のものは、会社の業績だけでなく業界の変遷を表していることから資料性が高い。しかし、非売品のものも多くあることから図書館で収集・管理する意義がある。

・その他

近年では、動画や画像などの研究データや研究者同士の電子メールも灰色文献に含めることがある。

 

3.おわりに

デジタル化は今後さらに進み、今まで灰色文献であったものもデータ化されインターネット上に保存される日もそう遠くはないだろう。灰色文献とはどんなもので、入手可能なものは何か入手できないものはどんなものがあるのかをしっかり考える必要がある。また、高い価値を有するものも含まれているためまだ明らかになっていないだけで価値のある資料の可能性があるということを意識して図書館業務に従事しなければならない。 

【参考文献】

・井上真琴『図書館に訊け!』ちくま新書 2004年


図書館に訊け! (ちくま新書) [ 井上真琴 ]

・若林武敏『図書館情報資源特論』2012年

総務省デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン~」第4章 デジタルアーカイブの構築・連携の課題 (2021年6月15日閲覧)https://www.soumu.go.jp/main_content/000153595.pdf